目指すは「国宝級」の色選び
目次
工事の進捗
本日までに、7部屋/10部屋に申し込みが入りました。残りは1階の1部屋と5階の2部屋です。5階は大型のロフトがついていて、家賃を強気に出していますが、内見してもらわないと良さはわからないです
もともと、立地には自信がありましたが、
・4月完成
・新築
が意外と希少性があり、引き合いが強いです
簡単に説明すると、最寄り駅周辺の徒歩10分圏内に、4月完成&新築は、この物件しかありません。2月3月完成の新築は、数棟あり、すべて埋まっていませんが、他の物件の部屋のタイプは1K、ワンルームばかりで、全く競合しません
確かに引っ越しのピークは、2-3月ですが、人の移動は4月若干残っているようです。また、現在、融資の引締めや建築費の高騰により、極端な新築不足が起こっているようです
あとは、住設商品が納期通り入って、完成が遅れないようにするだけです
2020年3月6日撮影
<鉄骨造工事の基礎知識>
鉄骨造は、建物の強度を柱と梁だけで確保するため、壁に関しては、外壁も内壁も強度をもたせていません。これに対して、木造は、外壁と内壁に耐力壁という強度の強い壁を配置して建物の強度を確保します
このため、鉄骨造の建築工程は
①鉄骨工事
②外壁工事
③軽天工事(けいてんこうじ)
(内壁の柱:LGSを設置する工事)
④ボード工事
と順番に別々の工事屋さんが分業して行います
これに対して、木造工事は①~④までのすべてを大工さんが行います
監督さんの話では、現在、大工さん不足で時給が高く、木造工事の工事費は割高になっているようです
現在、③軽天工事と④ボード工事が進行中です
エレベータの設置工事が終わりました。木目の高級感のある色を選びました(まだ保護のビニールが貼ってあるので、質感はいまいちです)
景観法
日本には景観法という法律があります
■景観法第1条
この法律は、日本の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする
そして、各自治体には、自治体ごとの景観法の条例があります。具体的には、自治体において景観計画が策定され、自治体の中に、景観地区という景観を一定のレベル以上に保ちたい地区が設定され、その景観地区ごとに建物の景観についての制限が決められれます
建物建築物への影響が大きいのが
色
です
◇
今回の建築地は、区の景観地区に入っていました。15m以上の建物が対象ですが、残念なことにこの建物は、5階建てで、高さが15mと数十センチあり、対象の建物になってしまいました
では、景観計画で色はどのように制限されるか説明します
景観地区は、住宅地、商業地などの用途によって色の制限が違います。今回の場所は住宅地ですので、住宅地らしく落ち着いた色の建物が求められます
例えば、以下の写真のように、
ヴェネチアのような
落ち着いた色の町並みはOK
隣のブラーノ島は
ちょっと派手すぎてNGなんていう話です
では、落ち着いた色、派手な色とは、どのような色を言うのでしょうか?
色の仕組み
色の話をすると、すぐにRGBが思いつく人が多いと思いますが、それは、色を3つの成分に分解した時の話であって、今回は、分解する前の色そのものの話です
ある色を表現する方法は、
色相・明度・彩度
の
『色の三属性』
を使います
◇
景観法の色は、この「色の三属性」をマンセル表色系を使うことが多いです
■色相
マンセル表色では、色相(しきそう)つまり色合いを
赤R 橙YR 黄Y 黄緑GY 緑G
青緑BG 青B 青紫PB 紫P 赤紫RP
の10色で表現します
■明度と彩度
この10の色は、それぞれ明度(明るさ)と彩度(鮮やかさ)で表現されます。これは、赤の例ですが、四角の色は、マンセル表色系では
5R 8/4
という番号の色ということで表されます
出典:福山市HP
引用:コニカミノルタHP
色の制限
自治体による建物の色の制限は、このマンセル表色系でされます。つまり10種類の色ごとの明度・彩度のシートで、どこからどこの範囲は使っていい、使ってはいけないという表現がされます
以下が、私の建物が建てられる区の色の制限です。赤枠は外壁、青枠は屋根の色です
この表からわかることは、建物の外壁に関して、
鮮やかな色はダメ
暗い色はダメ
という感じです
要するに、この図の枠の中にある色しか使えないとということです
外壁の材料を決める
重量鉄骨造の建物は、外壁にALC(発泡コンクリート)という材料を使いますが、ALCは、普通のコンクリートと違い水分に弱いため、外壁は塗装をするか、タイルを貼ります。当然、塗装よりタイルの方が高級感がありますが、コストが高いため、タイルを部分的に貼り、残りは塗装という方法がよく使われます
しかし、建築工事費の高騰により、今回の建築は、想定以上のコストがかかります。せめて、タイルの部分貼りと考えていましたが、一つ気になる法律があります
建築基準法第12条の改正
(平成20年4月1日)
詳細は省きますが、過去の外壁タイル落下事故の教訓から、第12条:定期報告制度において、外壁タイルは築10年に全面打診検査を検査が義務付けられました。全面と言っても、人の通行が想定される範囲だけです
とはいえ、全面打診を行うためには、足場の設置のために、百万円単位の出費が必要になります。定期的な外壁の再塗装は、ALC重量鉄骨造には必須のメンテナンスですが、新築から10年で行うのは少し早すぎます
結局、全面打診のことも気になり、最終的に、
ALCに全面ペイント塗装
を選択しました。タイルはなしです。コストを抑え、利回を優先した結果ですが、だからといってタイル貼りにデザインで負けたくはありません。そうなると、ペイントの色選びで頑張るしかないです
建物の色の方針を決める
いつのときでも、建物建築で悩むのが色ぎめです。
建具、フローリング、エレベーターのドア、玄関ドア、エントランスドア、クロス、天井・・・・・数え切れないほどの色を決めないといけません。もう、気が狂いそうです
それも今回は、建物の顔である外壁の色を決めないといけないプレッシャーのかかる重大な仕事です。そして、景観法による色の制限もあります
例えば、インターネットや町中で見つけた色のセンスのいい建物を真似ようとしても、それがマンセル表色系でいくつの数字で、景観法の制限内のものなのかどうかわかりません
◇
色の検討にあたって、最初に購入したのが
日本塗料工業会色見本帳
です。値段はおよそ2,000円
この見本帳を色を調べたい対象物に当てながら、近い色を探し出してマンセル値を特定します
しかし、実際やってみると、見本帳のどの色と一致するのか簡単にはわからない、色の特定に時間がかかるなどの問題が判明しました。実際の建物は、タイルや吹付け塗装であり、見本帳は紙の印刷物のため、質感が大きく違うことも難しさがあがる原因でした
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そこで、購入を検討したのが
色測計(しょくそくけい)
です
色速計は、図りたい色の物体に接触させて色を計測することにより、瞬時にマンセル値やペイント番号を表示してくれる計測器です。これさえあれば、気になる建物の色を測りまくり、理想の色のマンセル値を求めることができます
しかし、色測計は、5万円~10万円するため、個人が簡単に買えるようなものではありません
そこで、必死に探してアメリカのAmazon.comで見つけたのが
Color Muse
という商品です
値段は$68、日本円で7000円ぐらいです。アメリカに住んでいる息子に頼んで買ってもらい、帰国の際に持ってきてもらいました
写真の右手に握られているセンサーを色を測りたい対象に押し当てて、スマホのアプリを使って色を測ります
対象物の色と近い
ペイント番号(日本塗料工業会)
マンセル値
の候補を近い順に表示してくれます
ペンキ屋さんには、ペイント番号(日本塗料工業会)を伝えればいいですし、景観法の申請はマンセル値で行うことができます
一番上の例では
J22-70A
2.5Y7/0.5
がそれらに当たります。上がペイント番号、下がマンセル値です
◇
Color Museで遊びながら、色をいろいろ考えているうちに、2-3ヶ月が経ちました
景観法の縛りがあり
あまり大胆な色使いはできないが
何かインパクトのある色の建物にしたい
そんなことを考えていたとき、ネットの中である建物に出会うことになりました
国宝松本城
松本城
2019年11月23日撮影
です
均整の取れたデザイン、黒と白の色使い、こんな美しい建築物があるのかと思いました。そして、その週末、車で松本に向かったのでした
上の写真は、その時、私が撮った松本城の写真です。実物の松本城は、想像以上に美しく感動するばかりでした
◇
早速、私は松本城の内部に忍び込み、Color Museを使って色を測りまくりました
こうやって、やっと建物の色の方向性が決まりました
次回、足場をとった建物を公開する予定したいのですが、雨のが多く、足場がとれているかは少し微妙です
完成、入居開始まであと約1ヶ月です
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デベロッパー曜日、まだまだ続きます
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました