真北(しんほく)と磁北(じほく)の違い、知ってますか?
目次
工事の進捗
2019年12月24日撮影
正面から各階にALC(外壁材)の搬入が終わり、足場の設置が終わりました。外壁工事が始まり1階がほぼ終わりました。外壁の完成予定は2020年1月15日です
真北を知る必要
簡易的なボリュームチェックは終わっていますが、最終的な建物の大きさを決定し、容積率240%を使い切る建物を設計するために、なくてはならない情報が
真北(しんほく、まきた)の方向
です
北側斜線や日影規制(日照時間)のチェックために、正しい北の方向が必要です
そんなの地図を見ればいいでしょ!?
その土地の方角なら測量図に書いてあるのでは?と思う人も多いと思います。しかし、測量図は単に基準点からの相対的な距離を表しているだけで、測量図にかかれているNの方向は、真北である保証はありません
測量図の北の方向が間違っているのであれば、ゼンリンだろうが、Googleマップだろうが、地図から正確な北の方向を知ることはできません
じゃあ、測ればいいんでしょう!?
スマホに方位磁石のアプリもあるし、簡単なのでは?いやいや、スマホの磁気センサーは、磁北ははかれても真北ははかれません。磁北は磁気を帯びている地球の磁極点の方向です。
知りたいのは真北の方向、すなわち、地球の回転軸、つまり正確な南北の方向で、これは磁北とはわずかにずれています。真北と磁北の差は、東京で約7度もあります
そうなると、もう測量士さんにお願いして、太陽の軌道を測ってもらうしかないのです。結局、8万円ほどの費用を払って真北測定を行ってもらいました
これで、精度の高い北側斜線の設定と日影規制の検討が行えます
日影規制(日照問題)
建築基準法において、建物の高さが、第一種/第二種低層住居専用地域は7m以上、その他の地域は10m以上の場合、日照時間のチェックが必要です。ただし、商業地区は除外です
一般的には、高さから言って、現実的には5階建以上のビルを建築するときに検討が必要な法律です
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日影規制:3時間ー2時間、高さ4mの地区を例として説明します
(こういう表現をします。その場所ごとの日影規制の規制値は、区役所のHPで調べられます)
1. 地上から高さ4mの位置で、敷地の外側5mと10mに線を引きます
2. 冬至の建物の影を1時間ずつ描きます(8:00-16:00)
3. 3時間連続して影になっているところ(下図の濃いところ)を塗り、この部分が敷地境界と5mの中に収まっているかチェックします
4. 2時間連続して影になっているところ(下図の薄いところ)を塗り、この部分が10mと5mの中に収まっているかチェックします
出典:日影図 品川区役所HPより引用
もし、建物が大きすぎると色を塗った影の部分が、5mライン、10mラインから飛び出てしまいます。そこで、影がライン内に収まるように、建物の高さと幅を小さくしたり、回転させたりします
ちなみに、今回の土地は5時間-3時間、4mでしたので比較的有利な条件でした。ただ、建築士のMさんは、究極の建物形状を目指す方なので、最後は建物に取り付ける部品などを取り替えながらシミュレーションをしてくれました
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個人的には、日影規制のルールを知ったとき、違和感を感じました。これは、北側のお隣には厳しいルールです
なぜなら、日影規制の測定をする測定面は、地面から4m上空、つまり、戸建ての2階近くの高さです。ということは、高さ4m以下で隣地境界から5m以内の北側(お隣にとっては南側)は、冬至の日に一日中真っ暗になってしまいます。それでも、建築基準法上、何も問題ないということです
自宅の南側に突然、マンションが建つことになったとしましょう
日照権を守れ!マンション建設絶対反対!
といっても、後の祭り、法律上は、全く無駄な活動に終わってしまいます
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下図が私の土地の日影図です。細い線が、冬至のときの建物の影の一時間ごとの輪郭です。真北が少しだけ東の道路側に振れていたことは有利に働きました。真北測定のおかげです
ピンクのラインが5m:5時間、5-10m:3時間の影の範囲を表しています。どちらも領域に収まっていて合格です
今回の建物の日影図
また、幸運にも北側が月極駐車場であったことから、住民の反対運動などは起こりませんでした。
ただ、北側の土地の所有者から
日影図、偽装してたりしてねぇよな!
と一言だけ、チクリと嫌味を言われました。この分野に詳しい方のようでした
建物形状の決定
・高度地区(北側斜線)
・道路斜線(天空率)
・窓先空地
・日影規制
などの規制をくぐり抜け、最終ボリュームチェックが完了し、やっと建物の外形が決定しました
高度地区(北側斜線)だけを考えればもう少しノッポな6階、7階も検討もできますが、日影規制や道路斜線とのバランスをとったベストな形を建築士のMさんに設計していただきました。むやみに高層化するより、各階をなるべく広くとった方が、このあとの部屋割とコストの面でも有利です
次は、いよいよ建物内部のレイアウトの検討です。この外形の建物の中に容積率240%をいかに詰め込むかの勝負です
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デベロッパー曜日、まだまだ続きます
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました
本年度のコラムはこれで終了です。皆様、良いお年をお迎えください!