日本の中古住宅の課題について
国土交通省・土地産業局/住宅局のレポート「既存住宅流通市場の活性化」(令和元年10/18)によると、日本で販売されている住宅のうち、中古の割合は14.7%であり、アメリカ83.1%、イギリス88.1%、フランス66.9%と比べると、極端に低い数字になっています
いわゆる、日本人の新築志向というものかもしれませんが、レポートでは日本と欧米の住宅に関わる習慣やシステムに原因があると報告しています
具体的には、
1.米英では、売主への情報開示が義務付けされており、買主負担によるインスペクションの実施も定着
2.建物と土地は一体として扱われ、近隣の取引事例により比較評価されるため、物件の価値が下がりにくい
と言った点に違いがあるということです
1について、アメリカにおいては、日本の瑕疵担保責任(現在の契約不適合責任)がないです。つまり、何か不具合があっても、売主には責任がなく、買主が責任を負わないといけません
その代わり、売主は、住宅の情報開示が義務付けられていると同時に、ほとんどの買主は自分の費用でインスペクション(検査)を行います
これなら、中古住宅も安心して購入が出来ます
2については、日本の木造住宅の建物は、20年から30年で市場価格はほぼ0とみなされますが、欧米の場合、土地+建物での評価が一般的であり、不動産の評価が築年数で大きく変わることはありません。たとえ築100年の木造でも、その地区で同様なものが高額で取引されていれば、当然、価値の高いものとみなされます
また、アメリカの税法上、居住用賃貸不動産の減価償却の耐用年数は、構造や新築・中古の区別なく一律27.5年と定められていて、不動産投資もしやすい環境があります
更に、アメリカの場合、エスクロー制度(不動産の取引決済、書類の確認、精算業務を中立的な第三者が実施する制度)が用いられているため、売主、買主も安心して取引が出来ます
その上、アメリカの場合、MLSという日本でいうレインズ(業者向け)が一般消費者にも公開されているなど、網羅性、透明性、正確性の点で優位なところがあります
これらのことが、日本と欧米の中古住宅(賃貸住宅含む)の流通量の差に現れているわけです
日本の消費者は、情報面と制度面が整備されていないことにより、中古住宅の売買において大きな不安をかかえいますが、制度が欧米のようになれば、その不安が解消される可能性はあると思います
こういった話をすると、日本人は新築志向だ、とか、地震が多いから建て直さないと不安だと主張する方も多いですが、アメリカの西海岸など、地震の多い地区でも築100年の木造住宅が中古住宅として流通しています
日本の未来やSDGsの達成を考えれば、制度を改革してでも、中古住宅の活用を考える時期に来ていると考えるべきです