新しいセミオープンシステムを提案します
目次
入居が始まりました
2020年4月30日より入居が開始しました。新型コロナの影響もあって外構工事が遅れてしまいました。ちょっとみすぼらしくて恥ずかしいです
発注方式の種類
これから収益不動産の新築を目指す方のために、建築工事の発注の仕方について解説したいと思います
建物建築の発注の仕方は大きく3種類に分類できます
①一括発注
②分離発注(従来方式)
③分離発注(オープンシステム)
何を一括にして、何を分離するかというと、
設計監理 と 施工
です
順番に説明します
① 一括発注
大手ハウスメーカーや多くの工務店など、一般的な建物建築では、
設計と施工を一括して発注
することがほとんどです。建築主にとっては契約や交渉を一本化できる、何かあったときの責任や保証が明確など一番安心かつ簡単な方式です
ただし、費用的にはピンからキリまでという感じで、いい会社に当たれば、低コストで品質のいい建物が建ちますが、建築会社が利益に走ったり、手抜き工事をした場合、それをチェックすることは難しいです
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この方法は、建築費用の見積もりは建築会社におまかせのため、価格の交渉の余地はあまりありません。要するに、丸投げなので建築主が、個々の工事の価格が適正かどうか判断するとはまず無理なので、価格交渉をしても建築会社が値下げをする理由がありません
特に、TVでCMをやっているような会社は、非常に高い建築費を覚悟する必要があります
強いて言えば、複数のハウスメーカー同士を競わせて、値段を下げさせることもできますが、それはそれで相当なパワーと建築の知識がないとやりきれない作業だと思います
② 分離発注(従来方式)
建築家と議論を交わして、理想の建物を建築する場合の方式で、施主はまず、建築家に建物の設計を依頼します。建築家は、施主の要望をもとに建物を設計し、その建築の最適な建築会社を探し、建築を依頼います
設計は設計士に
建築は建築会社に依頼
(設計と建築を分離)
建築家は、建築会社が正しい施工をするか常に管理を行います。このため、建築会社が不正を働くことをチェックできる可能性があります。また、施主は、ついつい理想を追求してしまい、設計料が高額になり、必ずしも安く建築できるとは限らない方式です
設計料の相場は、建築費の5%~15%と建築家によって様々です
建築会社の建築価格については、中立な立場の建築士と一緒に細かいところまでチェックできるので、相場より高い工事が見つかった場合は、建築主は、正当な価格交渉を建築会社に対して行うことが出来ます
とはいえ、世の中、いろいろな設計士がいて、いろいろな建築会社があり、結果は様々です
③ 分離発注(オープンシステム)
従来方式の良さを活かしながら、さらに施工のコストを削減するやり方がオープンシステムです。これは、元請けの建築会社を使わずに、専門業者ごとに施主が直接契約を行って工事を発注する方式です
設計は設計士に
建築は工事ごとに工事会社に
フリーの現場監督をスカウト
元請けの建築会社がないため、その分のコストが削減できて建築費は安く抑えられますが、適当な現場監督が見つからない、建築主が工事業者と直接交渉をする必要があるなど課題が多いです
ネットでオープンシステムの話をたまに目にしますが、実際のところ、施主に求められる建築の知識レベルは相当高く、それほど実例も多くないと思います。また、何かあったときの責任や保証の問題も懸念されます
建築主が各工事業者に直接、工事費の支払いを行うので、銀行の融資をまとめるのも苦労が伴います
私も一度チャレンジしたことがありました。銀行との交渉もできましたが、現場監督の手配のところで頓挫してしまいました
これまで取り組んだ新築
私は祖父の時代から、7件の新築に関わりました。設計的に難易度の低い建物は一括発注、土地の形状などが複雑で設計的に難易度が高い建物は、建築家とじっくり議論をするため分離発注という使い分けをしています
しかし、今回の土地から新築は、分離発注②と③のいいとこ取りをした方式④を使っています。実は、昨年竣工した賃貸テラスハウスも同じやり方です
④ 分離発注(セミオープンシステム)
セミオープンシステム(商標登録検討中)は、私が考えた用語ですが、建築会社と交渉して、一部の工事を施主工事とすることです。
具体的には、今回、以下の工事を施主工事としました
<業者に工事を発注>
・外構
・エアコン
・ウォシュレット
・TVアンテナ工事
・インターネット工事
<施主自らDIY工事>
・植栽
・防犯カメラ
・建物銘板
・室銘板
・下駄箱
一番のメリットは、建築会社を経由しない工事を一部行うことによるコスト削減ですが、もう一つ大きなメリットがあります。
新築工事の10万/30万の経費処理
それは、施主工事にすることにより、一つ一つの工事が細分化され、
①10万未満⇒消耗品
②10万以上30万未満⇒固定資産⇒少額減価償却資産の損金算入特例
(年間300万円まで損金処理可能)
となり、30万以下の工事関係費、器具、設備の支払いのすべては、
その年度の経費
とすることができることです
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すべてを建築会社に委託した場合、建物設備は合計され10-15年の償却にする場合が多いです
具体例で説明すると、アパートを新築し、15万円のエアコン20台、合計300万円を導入するとします。建築会社に工事を丸投げすれば、見積もり上は、
空調工事一式300万円
になります。エアコンは、耐用年数10年かけて償却=経費化することになりますが、家電量販店に注文して施主工事とし、エアコン1台1台の値段が記載された請求書/見積書があれば、
15万円のエアコン20台分
の少額減価償却資産として、即時償却=その年の経費化が可能になります
施主支給
施主支給とは、工事で使う資材や設備を施主が購入して現場に支給することです。取付工事はなどは、建築会社にやってもらいます。当然、狙いはネットなどで安く購入してコストダウンを図ることが目的です
これに関して、建築会社が快く受け入れてくれない場合があります。理由は
①搬入、受入、検品の手間がかかる
我々がネットで資材や設備を買った場合、宅配業者が現場まで届けてくれます。受取人は、施主か現場監督にしますが、受取れないことやどこに配達されたかわからなくなるなどトラブルが発生しやすいです。また、宅配業者と違って、建築関係の配達業者は、現場において荷揚げをしてくれたり、部屋に1つ1つ配ってくれたりもします
施主が現場監督をしっかりと話し合って段取りをするならいいのですが、そうでなければ、現場監督にすれば、工事の邪魔になるだけであまり歓迎されるものではありません
よって、施主支給をするのであれば、細心の注意を図り、現場監督と密に連絡を取りながら、行う必要があります。納品のタイミングもなるべく工事の邪魔にならない後半の方がいいです。私の場合、一旦、自宅に納品してもらい、自分の車で現場に運ぶようなこともしています
②建築会社の利益が減る
資材や機器の仕入れに関し、建築会社はいくらかのマージンを載せて施主への見積り金額とします。マージンの%は様々ですが、大手ハウスメーカーであれば、問屋からの仕入れ値の40%ぐらいのマージンは平気で載せてきます
逆に言えば、その利益の源泉がなくなってしまうことは、建築会社にとっても喪失です。施主としては、こんなところで利益を取らないでよ、と言いたいところですが、彼らも商売なので利益を稼がないわけにはいきません
約500万円を経費化
分離発注(セミオープン方式)で、施主工事、施主支給を使い、今回、エアコン200万、便器50万、照明器具50万、TVアンテナ工事30万、インターネット工事30万などトータルで約500万円の工事関係費を年度の経費(損金)とすることができました
500万円が経費になれば、法人税の支払いはその税額分だけ減少します。しかし、大きな経費が発生すれば、利益も減ってしまいます。今期は利益を確保したいから、銀行から融資を受けたいからと考え、これ以上、経費は必要ないと思えば、固定資産計上して減価償却をしていくことも選択できます。ただし、一度、固定資産計上すれば、後から一括で損金処理することはできません
短期で節税するか、長期で減価償却を取るかは、その法人の長期的な財務の視点で考えなければいけないと思います
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施主工事、施主支給に関して、基本的に建築会社は何も助けてくれません。そういった意味で、適切な商品選びができ、現場監督さんといい関係が維持できるかどうかがポイントとなります
まさに、建築主としての実力が試されるところですが、コストも含めて、一から自分の理想の設備が入れられるという大きなメリットがあります
まとめ
施主工事を一部に用いる分離発注(セミオープンシステム)にはいくつかの利点があり、私としてはお薦めです。ただし、建築の知識も求められ、時間や手間もかかるので、できる方限定かもしれません
施主支給もコストを下げたい建築主はぜひやりたいと考える方法ですが、物品の搬入の煩雑さや利益の喪失など建築会社とよく話し合って実施することをおすすめします。少しだけコストダウンができても、建築会社との信頼関係を失うことの経済的損失は決して安いのものではありません
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今回のコラムは、新築を計画している方以外には、あまりピンと来ない内容でああったと思います。ただ、将来的に新築を計画される時に、思い出して読み返していただくと、何か良いアイデアが浮かぶのではないかと考えています
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デベロッパー曜日、まだまだ続きます
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました