テリー隊長
本コラムはフィクションです
目次
お隣から越境のクレームが
Aさんは、都内の高級住宅地の住宅密集地に家を所有しています。2008年に自宅の増改築をしたときに、隣地のBさんとの敷地境界にブロック塀を作りました。もちろん、ブロック塀はAさんの敷地側にです
しかし、Aさんは、翌年の2009年、Bさんとの土地の境界に打たれた金属鋲の位置から、Aさんの作ったブロック塀が、Bさんの敷地に30cmほど越境していることが気が付きました
「困ったなぁ、30cm越境しているのは確かだけど、うちも家を増築して、給湯器をブロックぎりぎりつけたし、ひさしも伸ばしたから、今更、ブロックを戻せと言われても家を改築するお金もないし、困ったなぁ・・・でも、境界はBさんの家の裏庭だし、Bさんも気がついていないから、とりあえずそのままにしておこうかな。。。」
◇
時は流れ、2030年のある日、隣のBさんがAさんの家に怒鳴り込んできました
「Aさん、あんたのところのブロック塀がうちの土地に越境してるじゃないか!どうしてくれるんだ!すぐにブロック塀を自分の敷地に戻さないなら、損害賠償で訴えるぞ!あんた、確信犯だな、越境しているのを知っていたんだろう」
と激しい剣幕で怒鳴りまくっています
「すみません、工事が完成したあとに気がついたんですが、家の改築も合わせってやったもんで、ブロックを元に戻すことができなかったんです。ごめんなさい。。。。」
「とにかく、一刻でも早く、ブロックをそちらの敷地に戻してもらわないと、こちらも法的な手段に訴えるかもしれないからな」
「わかりました。こちらの対応が決まり次第、ご連絡しますので、今日のところは。。。」
とりあえずBさんも鉾を収めてくれて、事なきを得ました
弁護士に相談
困ったAさんは、知り合いの弁護士に相談にいきました。そうすると、弁護士さんは
「それなら、時効取得で、すでにその越境部分の土地は、Aさんのものかもしれませんよ」
「時効取得?それってどういうことですか?」
◇
<時効取得>
民法第162条1
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
という法律です
Aさんが、Bさんの土地の一部を、所有の意思をもって、平穏に公然と20年間占有していたかどうかが、ポイントになります
Aさんが所有の意思を持っていたかは微妙ですが、特に揉め事は起こらず平穏に、ブロック塀を建設することよって公然と、2008年から2030年までの22年間占有していました
◇
「先生、私の場合、時効取得が成立するのでしょうか?」
「うーん、こういうケースで一番揉めるのが、20年間の占有を証明できるかどうかなんだよね。Aさんは、2008年のブロック塀工事のときの図面や写真とかはまだ持っていますか?」
「いやー、もう20年以上前のことなんで、なんにも残っていないです」
「それじゃ、20年間の占有の証拠は何もないんですね?」
「うーーん、こんなとき、タイムマシンがあればぁな・・・・」
タイムマシンの発明
実は、2030年になれば、タイムマシンは発明されているんです。ただし、戻れるのは2007年の過去までです。未来に行くのはちょっと無理です
えっ!本当ですか?なんでそれを知っているんですか?
もしかしたら、テリーさんって、タイムマシンでやってきた未来人とかですか?
いやいや、実はタイムマシンは2007年にすでに発明されているんです。
その名は
Google ストリートビュー
です
Googleストリートビューは、過去の写真を保存していて、最も古くは、サービスが始まった2007年の町の風景を見ることができます
すなわち、タイムマシンのように過去に戻ることができるんです
東京スカイツリー2009年と2019年
引用:Google
◇
Google ストリートビューの存在に気がついたAさんは、早速、過去の写真を検索してみました。すると2008年の写真に、ブロック塀と道路に打ち込まれた金属鋲がみごと写っていました
Aさんは、弁護士を伴ってBさんを訪問して時効取得について説明しました。当然、Bさんは納得しません。そこで、Aさんは、弁護士に依頼し、裁判所においてBさんを相手に、土地の処分禁止の仮処分と登記を申請します
結局、Bさんも諦め、Aさんの時効取得を認めることとなりました
ここは都内の坪300万円の高級住宅地、たとえ30cmの越境、坪数1坪であっても、金額は約300万円です。Aさんは、笑いが止まりませんでした
まとめ
Google ストリートビューが出たとき、無料でこんな高機能な情報得られるのかとびっくりしましたが、過去のデータが見れるようになった時はそれ以上に驚きました
まさに
タイムマシンの発明!
と思いました
今後も、Googleは高機能化の手を緩めないでしょう。おそらく、特定の場所、例えば渋谷のスクランブル交差点などは動画で24時間365日記録され、一般に公開されるのではないでしょうか?
プライバシーの侵害?それは、AI技術を使って顔にマスクをかけて解決するでしょう。恐ろしい時代が来ると言えば来るのでしょう。少なくとも、犯罪者の逮捕など世の中の役に立つことに活用してほしいいです
今回の事例をはじめとして、不動産業界にも様々な影響を与えていることは間違いはないです
◇
さて、その後、Aさんはどうなったでしょうか?当然、お隣のBさんとの関係は最悪になりました。その上、Bさんがことの顛末をご近所に言いふらしたおかげでAさんは地元で孤立し、四面楚歌状態になりました
結局、Aさんは、長年住み慣れた自宅を売って、他の場所へ引っ越すことになりました。時効取得を使ったことも少し後悔しています
皆さんもお気を付けください
◇
サラリーマン大家道、まだまだ続きます
最後までお読みただき、誠にありがとうございました
#本コラムの内容が、ジュニアさんのコラムと類似しているところがありますが、アイデアをパクったわけではないことを事前にジュニアさんには伝えてあります