不動産投資の個人事業の税務調査をうけました
目次
その電話は、突然かかってきました
コラムのタイトル通り、2018年7月の下旬、地元の税務署から突然、電話がありました
・税務調査をしたい(直近3年)
・日にちは8月のお盆明け
・自宅に訪問して関係書類を見たい
との内容でした
正直、びっくりしました。不動産投資を始めて15年以上経ってはいましたが、不動産投資の個人事業で税務調査を受けることは、めったにないというのが私の常識でした
ただし、いい加減な確定申告をし、どう見ても申告内容に矛盾や間違いがある場合、税務署に呼び出されることがあることは実例として知っていました
私の場合、税理士さんには頼まず、個人の確定申告書は毎年、自分で作成して提出していましたが、特に不正をしている認識はなかったので、あまり心配はなかったのですが、念のため、法人の税務をお願いしている顧問税理士さんに相談しました
その税理士さんも、私のようなケースで税務調査が入るのは珍しいとの見解でしたので、一体、何が引っかかったのか?少し心配になってしまいました
税務調査のシーズンは夏から秋
個人の確定申告を行うとよくわかりますが、毎年1月から3月の税務署は大忙しです。そして、4月から6月も法人の決算が多く、税務署の忙しい日々は続きます
一段落すると、6月の末に人事異動が発表され、7月に異動が行われ、新しい体制での仕事が始まります。7月中に案件は引き継がれ、8月ぐらいから税務調査が開始します
税務署も効率よく税務調査を完了し、修正申告などを12月末までに終わらせる必要があります。年が明け、1月になれば、個人の確定申告が始まるからです
まとめると以下のようになります
1月~3月:個人確定申告
4月~6月:法人確定申告
7月:人事異動、税務調査対象絞り込み
8月~12月:税務調査
税務署の年間スケジュールはこんな感じで回っているので、
税務調査は8月~12月
というのが業界の常識です
私の個人確定申告の税務調査への連絡が、7月下旬に来たのも上記スケジュール通りであり、タイミング的には何の不思議もないことです
問題はやはり、税務調査の理由です。そして、何をどこまで調べられるかです
税務調査のポイント
では、税務署が税務調査を行う目的はなんでしょうか?
それは、税金申告において、不正が行われていないかを調査し、不正に対しては修正を行わせ、正しい徴税を実施することです。延滞税などを徴収し、今後、不正が抑止されることを狙っています
では、税務調査によって指摘される不正とはどのようなものがあるのでしょうか?
税金の不正の仕組みは単純です。税金を逃れるためには
課税所得
(=収入ー経費)
を小さくすればいいだけです
つまり、不正を行い、故意に
・収入を減らす
・経費を増やす
ことにより、課税所得が少なくなり、その結果、税金も少なくなります
例えば、収入を低く見せかけるに、証拠が残らないように、家賃を手渡しでもらい、銀行には入れずそのまま、プライベートで使ってしまう方法があります。いわゆる、売上を抜くという行為です
固定資産税のリストと帳簿を突き合わせれば、入金のない部屋は簡単にわかりそうですが、20部屋のアパートのうちの1部屋でこのような不正を働いても、見つかりにくいものかもしれません。しかし、それは、明らかな脱税行為です
経費を多く見せかけるために、不動線賃貸経営に関係のない支出を経費にしてしまうことも行われます。プライベートな支出を経費にするならまだしも、存在しない取引を領収書を偽造して経費として処理するのは、相当、たちの悪い行為です
ただ、意図して不正を働くのではなく、うっかりミスで収入を減らしていたり、経費を水増ししていたりしていたことを税務調査で指摘されることもあるようです。基本的にすべてを税理士さんに任せていればまず起こらないと思いますが、個人で帳簿の入力をしている、複式簿記にまだ慣れていない初心者なら有り得る話です
例えば、敷金の返還処理です。退去時に、敷金と修繕費を相殺して修繕を行うときに、修繕費分の敷金を収入に計上しないといけないです
太陽光発電の売電収入や自動販売機の売上報酬なども、不動産収入に入れるべきものです
経費であれば、10年契約の火災保険料を一括で支払ったとしても、支払った金額を前払費用に計上し、年度では、当年分に対応する期間分だけ保険料として費用計上するなど、間違いやすいです
個人事業主の方の中には、電気代、携帯電話代、ガソリン代などの出費を、不動産と私用の割合に応じて家事按分して、不動産の経費とする方も多いと思いますが、不動産での割合があまりに多いのは問題です
とは言え、青色申告をしたからと言って、申告時に帳簿の提出は必要ないので、税務署としては、細かい経費の内訳を見て、税務調査の対象を選ぶ訳ではありません
税務署が見るのはやはり、賃料と経費、収益のバランスだと思います。巷で言われているのが
・売上(家賃収入)に対して経費の割合が多すぎ
・修繕費、消耗品などの特定の費目が多い
などです。特定の費目が100万円を超えてくると税務署のチェックが入るという噂を聞いたこともあります
事前準備
過去に祖父や父が個人の不動産事業で税務調査を受けていたことは知っていますが、あまり関わらなかったので勝手がよくわかりません
とりあえず、ネットで調べましたが、個人の不動産投資の税務調査の件数が少ないのか、有効な対策についての情報がほとんど得られませんでした
◇
税務調査の担当は、20代前半の女性で、感じとしては新入署員ではないかと思いました
私の自宅に来たいという希望でしたが、あれを出せ、これを出せと言われるのが嫌なので、必要書類、銀行の通帳などすべてを持っていくので税務署でやらせてほしいというと、あっさり認められました
私はお盆休みをフルに使って
・3年分の総勘定元帳
・3年分の貯金通帳
・3年分のレントロール
の印刷と領収書などのエビデンスを用意しました
税務調査当日
8月の下旬の約束の日、ダンボールに詰めた資料を車に載せて、地元の税務署に向かいました
会議室に案内され、対応したのは担当の署員一人だけです
開口一番に言われたのは
不動産所得が赤字なのなぜですか?
私の感想は、
やっぱりそこか!でも、何でそこなの?
実は、当時、すでに15年以上不動産賃貸をやっていましたが、赤字を出したのはその年が始めてでした。金額も
不動産所得が1000万円以上の赤字
でした
とは言っても、不正をして経費を水増しした訳ではありません。減価償却が終わっていない建物を建て替えのために解体して除却したため、損失が出ていたからです
このような損失は、必要経費に算入できます。ただし、不動産賃貸業が事業規模、いわゆる5棟10室のレベルである人に限ります
しかし、納得がいかないのは、これら一連の損金算入の確定申告をこの税務署の署員の指導の下でやっていたので、なぜ、今になって不動産所得が赤字になったからと言って税務調査を受けないといけないのか?ということです
ここからわかることは、税務調査の対象となる人の選択は、確定申告の相談があったかどうかなどは全く関係ないということです。しかし、税務署員に相談して確定申告を行ったかいはありました。除却金額を経費にするような複雑な内容でも、何一つ間違いも見つかリませんでした
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結局、帳簿を見られながら、これはなんですか?とか、この経費の領収書はありますか?とか、質問攻めに合いましたが、担当署員も経験が浅いようで、私が答えた内容がよくわからずに、署内にいる他の職員に何度か内容を確認に行ったりしていました
途中、何回か帳簿の一部コピーを求められましたが、素直に応じてコピーをしてもらいました
結局、2時間ぐらいで税務調査は終了し、担当署員からは、後日、結果は連絡しますと言われましたが、税務調査中に何も問題は指摘されませんでした
是認!
1週間ほどして、税務署の担当職員から電話がありました
内容が問題ないので
是認(ぜにん)します!
とのことです
それから1ヶ月ほどして、書面でも是認の通知が来ました
この通知を、法人の顧問税理士に見せたところ、税理士さんも、是認の通知書を見るのは始めてだと言っていました
俗に税務調査のときは、お土産をもたせろと言って、なにか簡単な指摘事項をわざと用意しておいた方が、税務署員も帰りやすいなんて都市伝説もありますが、そんな余計な心配をする必要はありませんでした
実際、個人が税務調査を受ける割合は1%ぐらいと言われています。その上、不動産賃貸業のような比較的シンプルな業態はもっと割合は低いと思います
しかし、国税庁の報告によるとH29年度の所得税の税務調査は約17.6万件、その内、申告漏れなどの指摘を受けたのは11.2万件(64%)に上り、ひとたび税務調査の連絡が来たら、それなりの覚悟は必要かもしれません
まとめ
私の税務調査は、是認という形で終わり、事なきを得ましたが、なぜ突然、税務調査が来たかは明らかです
理由は
1.建物の解体・除却による多額の損益算入があった
2.1により大幅な赤字になり、納税額が急減(マイナス化)した
につきると思います
そして、そのことは、税務署員とともに申告書を作って申告しても、税務調査とは全く関係ないと言うことです
おそらく、税務署も、大量の申告書の中から、怪しいと思われる申告書を選び出すために、パソコンなどを用いて数字にフィルターをかけて、機械的に選び出しているのだと思います
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ところで、例年であれば、8月~12月は、税務調査のシーズンです。しかし、国税庁によれば新型コロナの影響により、今年は4月から現在まで税務調査を行っていなかったようです。そして、最近、10/1に税務調査を再開すると発表がありました
楽待コラムをお読みの皆さん、もしかしたら、税務署から電話が、これから来るかもしれませんよ。ご用心ください
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サラリーマン大家道、まだまだ続きます
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました