①と②においては、ネットで得られるデータを用いて、客観的に今年の合格点予想をしました。
最後にまとめとして、宅建の合格点予想について、定性的な見解を述べたいと思います
まず、結論を述べてしまえば
- 宅建の合格点予測は予備校、講師でも簡単にはできない
- 今年の合格点予想は、35点未満になる
目次
宅建試験の出題者である一般財団法人 不動産適正取引推進機構(以下、機構)は、合格発表を通じて試験の結果について様々な情報やデータを公開します
一番のメインは、もちろん合格点と合格率です。ご存知の通り、宅建は、上位約15%が合格する相対評価の試験ですので、合格点がピッタリと上位15%の範囲に収まることがないため、その年の点数ごとの度数分布によって、合格率は、約15%~18%の間で変動します
このことは、逆に、合格ライン近くの1点あたりの人数は、だいたい3%以下であるということも示しています
しかし、残念なことに、機構は、合格点予想において最も重要な、点数毎の度数分布を公開していません
もし、自分が大手予備校の講師だったとして、合格点をどのように予想するか考えてみましょう
まず、自校には、生徒たちの何十年にも渡る宅建試験の得点と人数分布のデータがあり、毎年、上位何%が合格できたかという分析は、当然、行われているでしょう。もちろん、ちゃんと授業に出席して提出物を提出した人だけ、模試だけを受験した人だけなどのサンプリングも合わせて行われているはずです
これらと、発表される毎年の合格点と合格率を比較し、たとえば
- 合格率が15%の時、自校生の上位30%以上は合格
- 合格率が18%の時、自校生の上位35%以上は合格
というような分析データを用意しておきます
◇
さて、実際に試験が行われました
その年の自校の生徒の得点と人数分布の収集が進み、以下の予想結果がわかりました
- 36点以上は上位23%に入る
- 35点以上は上位28%に入る
- 34点以上は上位34%に入る
- 33点以上は上位40%に入る
ここまでデータが揃えば、みなさんでも簡単に合格点の予想ができますよね。以下が簡単に求まります
- 合格率が15%であった場合:35点以上が合格
- 合格率が18%であった場合:34点以上が合格
そうなると、結論は合格率が15%~18%である場合
- 35点以上は絶対合格
- 34点は合格率次第で合格
ということになります
上記の結果から、予備校や講師としては、合格ラインとして何点を発表するでしょうか?
もちろん、35点は合格と予想点とするでしょう
問題は34点です
この時点で、合格率が最終的に15%~18%のどこになるかわからない状況で、34点を含めるどうかどうかは検討の余地がありそうですね。当然、自校の過去のデータもその年によって当たったり、ハズレたりすることがあるのは、過去の予想点の実績から見ても明らかです
また、予備校には
下で外してはいけない
というバイアスがかかっています。要するに、低めの予想を出しおいて、結果が大きく上にハズレた場合、合格を信じていた受験生からの強い非難を受けます。しかし、逆に高めの点数を予想して、結果が低めの点数だった場合、不満を述べる人はいないでしょう
よって、予備校や講師は、自身のビジネスのことを考えれば、確実なラインを合格予想点とし、あえてリスクをとって可能性がギリギリの点数を合格予想点とする必要はありません
このように、実際の合格点と予備校や講師の出す合格予想点は、別なものと考えておいた方がいいということです
つまり
予備校の講師が35点、大手予備校が36点と予想を出してきたとしても、それが、機構の発表する合格点であると考えないほうがいいです
ということです
次に、今年の合格点が35点未満と考える理由について説明しましょう
私は自分が受験した感触とひかるオープンチャットの約300名の受験者からヒアリングした結果から、今年の合格点は35点未満と考えています
3ヶ月弱しか独学で勉強していませんが、自分の勉強の仕上がり具合では、試験直前に、過去の試験を解いて、だいたい40点以上の得点が取れていました
特に、2019年合格点35点、2020年12月合格点36点はともに40点以上得点が取れました。それに対して、今年の試験の結果は34点です。問題が難化しており、合格ラインは、35点を下回るはずです
このようなことをいうと、「あなたが点数を取れなかったのは、結局、基礎ができていなかったからですよ」という人がいるかもしれません。その通りですね。初見の問題が解けなかったのは、過去問ばかりを解いていた私の勉強のやり方の問題かもしれません
でも、宅建は、上位15%が合格する相対評価のテストです。私のような感想を漏らす受験者は非常に多く、今年の試験ついていえば、15%のラインが2019年合格点35点、2020年12月合格点36点より素直に下がったと考える方が自然です
大半の人が同じ状況なら、そのようなことを、終わってしまった今年の試験で言ってもあまり意味がありません
新型コロナ影響により、昨年の受験者は、激減しました。
その中で最も気になる情報は、昨年、受験者が多い不動産業界、金融業界、建築業界で受験の自主規制が行われたことです。受験の自主規制でも、しっかりと勉強した自信のある人まで受験をしてはいけない、というものではありませんでした。結果、2020年10月の試験は、受験者レベルが上がり合格点は過去最高の38点になりました
予備校や講師の方はいろいろは反論があるとは思いますが、2020年10月と2020年12月の予測は、半分以上の予想はハズレてしまいました。おそらく、この精鋭が多く、予想以上高い受験者のレベルを予備校や講師は正確に捉えることができなかったのでしょう。若干の修正を加えたとしても、過去の合格点予想の手法をそのまま用いたことが、予想をはずした原因だと考えています
引用:宅建速報.com
去年の反動は、今年の受験者急増という形で現れました
では、この急増した、受験生のレベルはどのようなものなのでしょうか?
私は、去年と逆のことが起こると考えています。つまり、昨年自主規制で受験しなかった人たちが戻ってきますがそれらの人は、宅建試験の勉強に関しては不勉強の可能性が高いと考えるからです。去年、辞退したわけですからね
確かに、通常より倍の2年間の勉強ができるメリットがありますが、宅建の試験勉強を2年間かけて継続してできる人はなかなかいないです。結局、試験の準備は、直前の半年ぐらいが勝負です
というわけで、今年の受験者急増は、受験者全体のレベルを下げると考えています
確かに、最近、私のように、YouTube講義を利用した独学者が台頭してきて、受験生のレベルが上っているという噂もありますが、従来の予備校、通信教育、企業派遣などに比べれば、まだまだ少数派であり、影響は限定的だと考えています
統計学の中にテスト工学という分野があります。例えば、宅建のような正答率70%で、上位15%が合格する試験を作るにはどうすればいいかを研究する学問です
興味のある方はこちらを御覧ください
詳細な説明はしませんが、出題者(機構)は、正答率の異なる多くの問題を用意し、その中から標準的なレベルの受験者が受験すると、平均して70%の正答率が得られるような問題を50問選んで宅建試験を作ります
しかし、昨年の民法改正によって、改正民法に対応した新しい問題のストックを用意する必要が生じました。これは、機構にとっては、合格点が変動する大きなリスクです。機構は公平な試験を実施することを求められており、得点の大きな変動は試験の信頼性を損ない、批判の対象になるからです
そのため、昨年は少し易しめの問題を試してみました。結果として、合格点は上振れました
その反動で、今年は難易度の高い、初見の問題を出してきました。今年は難問が多いという意見が多いですが、機構としては、改正民法対応の問題ストックを増やすために正答率を測定しただけで、規定通りのことを行っただけです。今年の問題も、数年後には問題集に掲載され、普通の問題と扱われるものとなるでしょう
そして、出題者側が、このような測定目的の問題を出題した時、だいたい、正解率は、機構の想定通りにいかず、悪いものになります。なぜなら、機構は、法律や判例を元に問題を作成し正答率の予想をしてきますが、対する宅建受験者側は、過去問を何回も解く暗記中心の勉強法をとっているからです
このことから、機構が設定した「上位15%が合格、正答率35点70%」は、下側にハズレることになります
これも私が、今年の試験の合格ラインが35点を下回ると考える理由です
①②③と私がなぜ、今年の合格点が33点または、34点と予想するか、データと情報の分析結果から説明しましたが、みなさんは、どう思われたでしょうか?
とりあえず、いろいろ情報を探したり、辺りを見回しても、合格点が35点以上になる証拠は、私には見つけられませんでした
もちろん、予備校や講師たちは、私と違っていろいろなビッグデータの蓄積や経験があり、私の分析など鼻にもかけないのかもしれません
ただ、予想合格ライン上にいる何千人もの不安な受験者に対して
私の予想では、合格率15%~18%なら、合格ラインは35点です。でも、数字的になんでそうなるかは教えらませ~ん
ではちょっと、受験生がかわいそうではないでしょうか?
講師の方を責める気はありません。実際、営業上、公開できないデータでしょう。でも、合格ライン上の人たちは、合格ラインとともにその理由も必要としているのです
そろそろ、これまでのやり方ではなく、お持ちのビッグデータをAIで分析して合格点を発表するぐらいのことはしてもいいのではないでしょうか?
宅建を含め、資格教育業界、情報化戦略については、とても遅れていると思いますよ
注:この予測はあくまでも私が個人的に求めたもので、これがハズレても何らかの保証をすることはできませんのでその点はご了承ください。競馬の予想や人生相談の占いぐらいの情報として捉えてもらいたです